来週の為替相場見通し:『ユーロドル(1/20)

⚫メインシナリオ

来週は、「テクニカル的な地合いの弱さ」+「欧州経済指標の下振れを通じた欧州経済の先行き不透明感再燃」+「米FRBによる利下げ開示時期の後ずれ観測を通じたドル全面高の流れの継続」を材料に、ユーロドルが一段と下げ足を速める展開をメインシナリオとして予想いたします(1.08台半ばに位置する一目均衡表雲上限を割り込めば、ロスカット主導で1.07台半ばまで一気に下落する恐れあり)。

ユーロドル相場 振り返り
今週のユーロドル相場は、週初1.0955で寄り付いた後、早々に週間高値1.0969まで上昇しました。しかし、買い一巡後に伸び悩むと、(1)ユーロ圏11月鉱工業生産(結果▲6.8%、予想▲6.0%)の市場予想を下回る結果や、(2)欧州株の冴えない動き、(3)心理的節目1.0900を割り込んだことに伴う仕掛け的なユーロ売り・ドル買い、(4)フランス中銀ビルロワドガロー総裁による「我々の次の行動は利下げとなるだろう」「金利は現在の水準より高くなるべきではない」とのハト派的な発言、(5)ECB月次調査による1年先期待インフレ率(結果3.2%、前回4.0%)および、3年先期待インフレ率(結果2.2%、前回2.5%)の急低下、(6)ウォラーFRB理事による「以前ほど迅速に利下げを行う必要はない」「利下げを開始した場合でも秩序だって行うべき」との早期利下げに慎重な発言、(7)米経済指標の力強い結果、(8)上記6、7を背景とした米長期金利の急上昇(ドル全面高)が重石となり、週央にかけて、週間安値1.0844まで下落しました。

もっとも、売り一巡後に下げ渋ると、週末にかけて持ち直し、日本時間1/20午前4時00分現在では、1.0892前後で推移しております。尚、今週はオーストリア中銀ホルツマン総裁による「2024年の利下げを想定するべきではない」「利下げについて議論する理由がない」との発言や、ドイツ連銀ナーゲル総裁による「利下げ協議は時期尚早」「インフレはまだ高すぎる」との発言に加えて、ラガルドECB総裁や、オランダ中銀クノット総裁、スロベニア中銀バスレ総裁などからもタカ派的な発言(市場で燻る早期利下げ期待を牽制する発言)が相次ぎましたが、市場の反応は限られました

ユーロドル相場 見通し
ユーロドル相場(EURUSD)は、12/28に記録した約5ヵ月ぶり高値1.1141をトップに反落に転じると、今週半ばにかけて、一時1.0844(昨年12/13以来の安値圏)まで下落しました。この間、日足ローソク足が一目均衡表転換線や基準線、21日移動平均線やボリンジャーミッドバンドを下抜けした他、強い買いシグナルを示唆する一目均衡表三役好転も消失するなど、テクニカル的に見て、地合いの悪化を強く印象付けるチャート形状となりつつあります。また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)欧州経済の先行き不透明感(今週発表された欧州12月新車販売台数は前年同月比▲3.3%と16カ月ぶりのマイナス転落)や、(2)ECBによる根強い早期利下げ観測(ECB当局者からは市場で燻る早期利下げ期待を強く牽制する発言が相次ぎましたが、インフレ圧力の鈍化傾向が強まる中で、市場では依然として4-6月の利下げ開始を織り込む動きが根強い)、(3)米FRBによる利下げ開始時期の後ずれ観測(米金利上昇→対主要通貨ドル全面高)など、ユーロドル相場の下落を連想させる材料が増えつつあります。

こうした中、来週は上記1を確認する目的で、1/24に予定されている欧州各国のPMI速報値や、1/25のドイツ1月IFO景況指数に注目が集まる他、上記2を見極める目的で、1/25に開催されるECB理事会およびラガルドECB総裁記者会見に注目が集まります。前者(欧州経済指標)については、市場予想を下回る可能性が高いことから、欧州経済の先行き不透明感を通じて、ユーロドルに下押し圧力を加えそうです。一方、後者については、声明文、ラガルドECB総裁記者会見共に、利下げ開始時期のヒントを発する可能性は乏しい(利下げ議論は時期尚早。インフレデータや賃金データをじっくり見てから判断するといったスタンスを続ける公算が大きい)と考えられることから、ユーロドルに与える影響は限られそうです

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