20231204. 朝、ドル/円 週間見通し 切抜き

米長期債利回り低下続き11月13日以降の安値更新、安値試し続く

〇先週のドル円、30日に148.51まで戻すも、2日未明に146.65を付け11/13高値151.90以降の安値を更新
〇米11月ISM製造業景況指数の不冴え、パウエル議長発言がややハト派な内容であったこと等が背景
〇これを受け米10年債利回りは4.20%まで低下、NYダウは2日連続で年初来高値更新して越週
〇ドル円は高値から8円規模の下落に入っている可能性があり、中期でのターゲットは144円割れか
〇147.35-70水準は戻り売り優先、強気転換には148.51超えの必要あり
〇146円前後では買い戻しも入りやすいが、146円台が続くうちは145円台中盤を試す動きに向かう流れ

【概況】

ドル円は11月29日午前安値146.67円で11月21日夕安値147.15円を割り込み、30日深夜高値148.51円までいったん戻したが、12月1日深夜からの急落で2日未明には146.65円を付けて11月29日安値をわずかに割り込み、11月13日夜高値151.90円以降の最安値を更新した。
米ISMの11月製造業景況指数が13か月連続で50を割り込み、注目されていたパウエルFRB議長発言が予想ほどにはタカ派的でなかったことにより米国の利上げ終了感と来年前半の利下げ開始期待が強まり、米長期債利回りが一段安する中でドル円も失速した。

【米ISM製造業景況指数、13か月連続で50割れ】

12月1日に発表された米サプライ管理協会(ISM)による11月製造業景況指数は46.7で10月と同じだったが市場予想の47.6を下回り、景気判断の強弱目安とされる50を13か月連続で割り込んだ。新規受注は10月の45.5から48.3へ改善したが生産が50.4から48.5へ悪化、雇用も46.8から45.8へ悪化した。
S&Pグローバルによる11月の米製造業PMI確報値は49.4となり速報と変わらずだったが、10月確報値の50.0から悪化した。

先週は11月29日の米7-9月期GDP改定値が速報の前期比年率4.9%から5.2%へ上方修正されるなど景気の底堅さを示すものも見られたが、30日早朝発表のベージュブックでは景気判断が下方修正され、30日の新規失業保険申請件数が前週から悪化、失業保険受給者数も増加するなど、景気過熱感をもたらしてFRBへの追加利上げを催促するほどのものはなかった。逆に30日発表の10月米PCEデフレーターは予想と一致したために市場反応はドル安を助長しなかったものの全体及びコアの前月比と前年比が揃って低下しており、11月14日の米10月CPIと11月15日の米10月PPIが揃って鈍化したことも踏まえてインフレ低下が順調に進んでいることを示した。
今週は12月8日の米11月雇用統計に注目が集まるが、景気過熱感を示すサプライズがなければ利上げ終了感は変わらず、低調な数字なら来年の利下げ期待率も高まると思われる。

パウエルFRB議長発言は比較的ハト派的】

米FRBのパウエル議長は12月1日の講演で金融政策については「十分に景気抑制的なスタンスに達したと結論付けたり、金融緩和時期に関して臆測したりするのは時期尚早だ」として市場の早期利下げ期待に釘を刺し、「インフレ率が2%の物価目標に向かうと確信するまでは政策を景気抑制的に保つち、適切なら一段の金融引き締めを行う用意がある」と述べたが、「引き締めが行き過ぎるリスクと不十分にとどまるリスクは均衡しているため慎重に政策を進める」と述べた。
追加利上げに含みを持たせているものの、従来の姿勢と比較してタカ派的なサプライズ感はなく、「FRBは達成したかったことに到達しつつある」との言及があったことで市場は利上げ終了感を再確認したようだ。

米金利先物市場においてはすでに利上げが終了しており、来年3月までの利下げ確率は6割、5月までの利下げは9割近くへ上昇している。11月28日にFRB内でタカ派とされるウォラー理事が「インフレ低下を確信できるなら政策金利を引き下げ始めることができる」と利下げに言及したことで利下げへの期待感が一挙に拡大しており、その後にFRB高官や地区連銀総裁らが早期利下げへのけん制的発言を繰り返したものの効果は薄かった。

【米長期債利回りは一段安、ダウは2日続けて年初来高値更新】

12月1日の米長期債利回りは利上げ終了感と来年の利下げ期待により総じて低下した。
長期金利指標の10年債利回りは前日比0.13%低下の4.20%となり直近のピークである10月23日の5.02%以降の最低を更新して週を終えた。週間では11月24日の4.47%から0.27%低下した。
30年債利回りは前日比0.11%低下の4.39%となり直近のピークである10月23日の5.18%以降の最低を更新、週間では11月24日の4.60%から0.21%低下した。

利上げ動向に敏感な2年債利回りは前日比0.15%低下の4.54%となり直近のピークである10月19日の5.26%以降の最低を更新、週間では11月24日の4.96%から0.42%の大幅低下となった。
米長期債利回り低下により日米長期金利差が縮小していることが直接的にドル円の下落を助長しているが、当面はこの傾向が続くのではないかと思われる。

一方で12月1日のNYダウは前日比294.61ドル高と上昇、11月30日に前日比520.47ドルの大幅高で8月1日高値を超えて年初来高値更新としていたが、2日連続での年初来高値更新となった。ナスダック総合指数は11月30日に32.27ポイント安と反落したが12月1日は前日比78.81ポイント高と上昇し、年初来高値である7月19日高値14446.55へ徐々に迫っている。
米国株高はアジア株高に影響し、リスク選好感がドル円にとっては上昇要因になるものだが、米長期債利回りの大幅低下傾向の中ではリスク選好感よりも円高への修正的な動きが優先される

【11月13日高値から8円前後規模の下落へ発展か】

ドル円は11月13日高値151.90円で昨年10月21日高値151.94円に迫ったものの高値更新及び152円到達へ至らず、それまでの円安継続感がいったん仕切り直しを強いられ、米国の利上げ終了と来年前半の利下げ期待が強まって米長期債利回りが低下したために円安の土台であった日米長期金利差が縮小に転じたことで下落規模が拡大している。
11月13日までの上昇期には一目均衡表の26日基準線前後が下値支持線と機能していたが同線割れから下げ足が速まり、12月1日安値への下落で先行スパンからも転落し始めている。

下落規模としては3月8日高値137.91円から3月24日安値129.63円までの下落時(下げ幅8.28円)や6月30日高値145.06円から7月14日安値137.24円への下落時(下げ幅7.82円)に近いレベルと思われる。12月1日安値までの下げ幅はまだ5.25円に過ぎないため、11月13日高値151.90円から8円規模の下げ幅となる144円弱の水準を試しに向かう可能性もあるのではないかと思われる。
11月30日深夜高値148.51円を起点とした下落の下値目途としては、11月23日未明高値149.74円から11月29日安値146.67円までの下げ幅と同規模として145.44円、11月29日安値からの戻り幅の倍返しなら144.83円と計測されるが、それらを下回り始める場合は144円を割り込む可能性も高まるのではないかと考える。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、146.00円を下値支持線、147.70円を上値抵抗線とする。
(2)147.35円から147.70円にかけての水準は戻り売り有利とみる。強気転換には11月30日深夜高値148.51円を超える必要があると考える。
(3)146.00円前後では買い戻しも入りやすいとみるが、146円台での推移が続くうちは146円割れから145円台中盤を試しに向かう流れと考える。12月8日の米雇用統計前後までは下落基調が続きやすく、そこでいったん売り一巡として反騰期に入れるのか試されるのではないかと注目するが、米雇用統計を通過しても下落基調が変わらなければ年末まで円高基調が続きやすくなるのではないかと考える。

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