ドル円、日銀による金融緩和修正を巡る思惑を背景に急落。一時141円台半ば
⚫ドル円(USDJPY)の日足チャート。円相場が急伸し、一時200日線を下方ブレイク、そして141.62レベルを付ける局面あり。10日線がレジスタンスラインとして意識される状況が続いていることも考えるならば、今のドル円の焦点はやはり新たなサポート水準の見極めにあります。
⚫昨日の外為市場では円相場が急伸し、ドル円(USDJPY)は一時141円台へ急落。クロス円でも円高が進行。日米欧の金融政策が転換点を迎えている状況を考えるならば、外為市場のトレンド転換を意識する局面に。今日の注目材料は11月の米雇用統計。
⚫7日の米国株。この日はAIがテーマとなり、大手ハイテク株の買いが指数の上昇をけん引。S&P500指数のセクター別パフォーマンスは以下のとおり。
個別では、新たなAIモデル「Gemini」をリリースしたアルファベット $GOOGL が5%超の上昇。AI向けの新たな製品を発表した $AMD は10%近く急騰する展開に。
⚫FRBの利上げサイクル終了と来年の利下げ観測、そして日銀の政策修正の思惑を受け、11月以降日米の利回り格差が縮小の傾向に。この動きに連動し、ドル円(USDJPY)の下落圧力がじわりと高まる状況にあります
⚫円相場の動向。11月以降、じわりと米ドル安の圧力が高まる状況に。注目は米ドル安が進行する裏では、クロス円で円安の圧力が徐々に後退していること。そして昨日の円高。今年の11月がトレンド転換のタイミングだった、と後で振り返る可能性あり
⚫ドルインデックス(DXY)の日足チャート。対円での急落や他の主要通貨での米ドル安優勢も重なり、リトレースメント38.2%の水準(青ライン)が新たなレジスタンスの候補に浮上。200日線を再びブレイクする場合は、61.8%の水準102.54レベル(黒矢印)のトライが焦点に。
〇ドル円、米国時間午後にかけて、安値141.69(8/7以来、約4カ月ぶり安値圏)まで急落
〇植田日銀総裁の「年末から来年にかけ一段とチャレンジングになる」との発言の余波続く
〇ユーロドル、対主要通貨でのドル売り圧力等に米国時間午後にかけ一時1.0817まで反発
〇ドル円、主要テクニカルポイントの大半を下抜け、強い売りシグナルも継続、地合い悪化
〇ファンダメンタルズも日米金融政策格差に着目したドル高・円安トレンドに修正が入り易い外部環境
〇来週の日銀金融政策決定会合を通過するまでは、ドル円相場に下押し圧力が加わり易い時間帯が続くか
〇短期的なドル円相場見通しを「ブル」から「ベア」へと変更
〇本日の予想レンジ:141.50ー145.00
海外時間のレビュー
7日(木)のドル円相場は大幅下落。アジア時間早朝にかけて、高値147.49まで上値を伸ばすも、一巡後に伸び悩むと、(1)植田日銀総裁による「チャレンジングな状況が続いているが、年末から来年にかけ一段とチャレンジングになるというようにも思っている」との発言や、(2)植田日銀総裁と岸田総理大臣との会談実施、(3)上記1、2を背景とした日銀による金融緩和修正の思惑(来週予定されている日銀金融政策決定会合でマイナス金利解除など金融緩和政策の修正がなされるのではないかとの思惑浮上→円ショートのアンワインド誘発)、(4)国際通貨基金(IMF)のジュリー・コザック報道官による「日銀の金融政策について、インフレ目標が持続的に達成できることが明らかになった際に備えて、短期の政策金利を引き上げる用意を続けるべきだ」との発言、(5)ドル円ロング勢の大規模ロスカットが重石となり、米国時間午後にかけて、安値141.69(8/7以来、約4カ月ぶり安値圏)まで急落しました。
引けにかけて持ち直すも戻りは鈍く(急ピッチな下落に対する自律反発主導で持ち直すも戻りは鈍く)、本稿執筆時点(日本時間12/8午前6時10分現在)では、143.88前後で推移しております。
7日(木)のユーロドル相場は下落後に持ち直す展開。(1)ドイツ10月鉱工業生産(結果▲3.5%、予想▲3.0%)の冴えない結果が重石となる中、欧州時間朝方にかけて、安値1.0755まで下落しました。しかし、売り一巡後に下げ渋ると、(2)急ピッチな下落に対する反動買いや、(3)対主要通貨でのドル売り圧力、(4)来週のECB理事会を控えたポジション調整(短期筋のショートカバー)が支援材料となり、米国時間午後にかけて、高値1.0817まで反発しました。引けにかけて小反落するも下値は堅く、本稿執筆時点(日本時間12/8午前6時10分現在)では、1.0792前後で推移しております。
本日の見通し
ドル円は日銀による金融緩和修正を巡る思惑を背景に一時141.69(8/7以来、約4カ月ぶり安値圏)まで急落しました。この間、日足ローソク足が主要テクニカルポイントの大半を下抜けした他、強い売りシグナルを示唆する「一目均衡表三役逆転」「弱気のバンドウォーク」も成立するなど、テクニカル的に見て、地合いの悪化を強く印象付けるチャート形状となりつつあります。また、ファンダメンタルズ的に見ても、これまでドル円相場を下支えしてきた、(1)米FRBによる金融引き締め長期化観測と、(2)日銀による金融緩和の長期化観測の2つの材料が共に不透明感に包まれるなど(米FRBによる来年3月FOMCでの利下げ観測台頭+日銀による来週の会合でのマイナス金利解除観測台頭)、日米金融政策格差に着目したドル高・円安トレンドに修正が入り易い外部環境が整いつつあります。
特に、市場では、米FRBが利下げに踏み切ってしまうと、日銀がマイナス金利をより一層解除しづらくなるとの見方が強く、日銀がその前に(来年3月より前に)マイナス金利解除に踏み切りたいと考えているのではないかとの思惑が強まっています(こうしたことを総合的に踏まえて、植田日銀総裁が「年末から来年にかけて一段とチャレンジングになる」と発言したと解釈)。この為、来週予定されている日銀金融政策決定会合を通過するまでは、ドル円相場に下押し圧力が加わり易い時間帯が続くと見られ、当方では短期的なドル円相場見通しを「ブル」から「ベア」へと変更いたします。尚、本日は日本時間22:30に発表される米11月雇用統計に注目が集まります。非農業部門雇用者数や平均時給が市場予想を下回る場合には、雇用情勢減速→賃金インフレ鈍化→米FRBによる利下げ観測台頭→米金利低下→米ドル売りの経路で、ドル円に強い下押し圧力が加わる恐れもあるため、本日はアジア時間、海外時間共に、ドル円相場の下落リスクに警戒が必要でしょう。
本日の予想レンジ:141.50ー145.00
注:ポイント要約は編集部
ドル円日足
コメント