金曜日サマリー
〇先週のドル円、週初151.90まで上げ年初来高値を更新するも、週末にかけ149.19まで急落
〇米10月CPIとPPIがともに予想以上に鈍化、新規失業保険申請件数や鉱工業生産も悪化
〇インフレ鈍化傾向が顕著となり、利上げ打ち止めと来年夏までの利下げ観測強まる
〇米長期金利指標の10年債利回りは週末一時4.38%まで低下の後、4.44%で終了
〇150円以下での推移中は一段安余地あり、149.19割れからは10/30深夜安値148.80試し
〇150円台を回復・維持し始める場合は戻りに入るとみて150円台中盤を試すとみる
⚫ドル円が私たちが注目しておりましたサポート帯を先週金曜日に下抜け。
短期的なトレンドが転換した可能性があります。
今後の円高の可能性について。
ドル円の重要なサポート帯について、これまで149円台前半と位置付けてきましたが、ちょっと目線を上げたいです。今週の為替変動を受けて、150円台前半に新しく相場の節目が形成されています。今後もし、その節目を下方にブレイクした場合には、ようやく、これまでの円安トレンドが(少なくともここ数週間の短期的な円安トレンドが)終わって一旦、調整局面(円高局面)に入ることが想定されます。
その後しばらくは150円台前半の節目で下支えされたり反発する展開が見られましたが
金曜夜に、節目を下抜けて、少なくとも短期的なトレンドは円高に転換しました。
【概況】
ドル円は11月13日に151.90円を付けて年初来高値としたが、昨年10月21日高値151.94円に一歩届かずに下落に転じた。11月14日の米10月CPIと15日の米10月PPIがともに予想以上に鈍化したとと、16日の週間新規失業保険申請件数や米10月鉱工業生産が悪化したこと、17日夕刻には米16日の週間新規失10年債利回りが一段と低下したことをきっかけとして11月15日安値150.05円を割り込み149.19円まで安値を切り下げた。149円割れはひとまず回避したがNY時間の戻りは149.87円にとどまり150円台回復に至らなかった。
11月17日夜に発表された10月の米住宅着工件数(年換算)は前月比1.9%増の137万2000戸となり、2か月連続のプラスで市場予想の135万戸を上回り、住宅着工許可件数も前月比1.1%増の148万7000戸で予想の145万戸を上回ったが、市場の反応は鈍かった。
【米インフレ鈍化で米長期債利回りは低下傾向に入る】
先週は米国のインフレ鈍化傾向が顕著となり、市場は利上げがすでにピークとなり来年夏までには利下げに入るのではないかとの見方を強めた。
10月の米CPI上昇率は全体の前月比が0.0%で9月の0.4%から大きく鈍化して前年比も9月の3.7%から3.2%へ鈍化した。コア指数の前年比も9月の4.1%から4.0%へ鈍化した。
10月の米PPI上昇率は全体の前月比がマイナス0.5%となり、9月の0.4%から大幅に鈍化、前年比は9月の0.2%から0.0%へ鈍化した。コア指数の前年比も9月の2.7%から2.4%へ鈍化した。
10月の米輸入物価指数は前月比マイナス0.8%となり、9月の0.5%から大幅に鈍化、輸出物価指数も前月比マイナス1.1%で9月の0.5%から大幅に鈍化した。
米FRBがインフレ指標として重視するPCE(個人消費支出)デフレーターの発表は11月30日であり、次回FOMC(12月12-13日)もまだ先だが、当面する米経済指標がサプライズ的に強い数字を続けることにならなければ市場の見立て通りに年内の利上げはなく、早ければ来年3月19-20日の会合や6月11-12日の会合で利下げ議論となるのではないかという市場の期待感も増して行く可能性がある。
【FRB高官は市場に慎重さを求める】
11月17日にサンフランシスコ連銀のデイリー総裁は追加利上げの是非を判断する前に経済指標を見極めるとし、従来の「追加利上げの可能性を排除しない」との表現を採らなかったが、「早過ぎる政策判断のリスクは現実的にある」、「時期尚早な宣言は予想の誤りにとどまらず政策の誤り」、「待つことへの大胆さが必要だ」と述べ、早期利下げへの期待に釘を刺しつつも利上げ打ち止め感も示した。
ボストン連銀のコリンズ総裁も「インフレ率を2%に戻すためには忍耐強く、断固とした態度で臨まなくてはならない」と述べたが、これも早期利下げ期待をいさめるものと思われる。
シカゴ連銀のグールズビー総裁も「インフレ率を2%に戻すためにあらゆる必要な措置を実施する」とし、「インフレを巡る状況は改善しているもののなお高すぎる」と述べた。
バーFRB副議長は政策金利は「ピークにあるか、それに近いところにある」と述べて利上げサイクルの終了期に来ている認識を示したが追加利上げ余地に含みを持たせている。
11月16日にはNY連銀のウィリアムズ総裁が今後は「データ次第」とし、クックFRB理事も「インフレ率を2%へ低下させる上で十分に景気抑制的なスタンスを追求する必要がある」と述べ、クリーブランド連銀のメスター総裁も「インフレ率が2%に向かって低下することを確信できるようなより多くの証拠を必要としている」と述べている。
【米長期債利回りは低下傾向、ダウは続伸】
11月17日の米長期債利回りはまちまちだった。長期金利指標の10年債利回りは前日と変わらずの4.44%で終了した。11月14日の米CPI鈍化をきっかけに前日比0.19%低下し、15日は急低下後の反動で0.08%上昇だったが、16日は0.09%低下となり前日の反発分を解消した。17日は一時4.38%まで低下してから戻したが、10月23日の5.02%をピークとした低下傾向を継続している。
30年債利回りは前日比0.03%低下の4.59%で終了した。14日に0.13%低下、15日に0.07%上昇と戻したが、16日は0.08%低下で前日の上昇幅を解消し、17日は一時4.57%をつけて10月23日の5.18%をピークとした低下傾向を続けた。
利上げ動向に敏感な2年債利回りは前日比0.05%上昇の4.89%で終了した。14日に0.20%の大幅低下、15日に0.08%上昇と戻して16日は0.08%低下、17日も4.80%まで低下したがその後にプラス圏まで戻して下げ渋りとした。
2年債利回りは利上げ状態がまだ続くことで下げ渋りがみられるものの、10年債や30年債の利回りは低下傾向が顕著となってきている。ただし、ドル円としては日米10年債利回り格差の縮小が短期的な円高要因となりえるものの、格差の絶対水準は大きなままであり、利回り格差の確保を目指した円のキャリートレードが活発化することで円売りドル買いが続くとの見方も根強い。
11月17日のNYダウは前日比1.81ドル高とわずかに上昇したが、8月1日の年初来高値35679.13ドルから10月27日安値32327.20ドルまで下げたところから反騰入りして35000ドル台に到達しており、米長期債利回り低下傾向と米国景気の底固さへの期待が優先している。ナスダック総合指数も11.81ポイント高と小幅上昇だったが、7月19日の年初来高値14446.55から10月26日安値12543.86まで下げたところから切り返して14000台に到達しており、ダウとともに楽観的先高期待が増している印象だ。
⚫円相場の動向。先週14日に発表された10月の米CPI後の動きを確認すると、主要通貨で円買い優勢の状況にある。未だ調整の範囲内ではあるが、米ドル安を受けドル円が149円台へ下落している状況も考えるならば、今週、各クロス円が反発する局面では、先週の高値が意識される可能性あり。
⚫ドルインデックス 今週の外為市場が始まる前のトレンドチェック。米ドル相場の方向性を表すドルインデックスの日足チャート。IG為替レポートでも指摘しているとおり、米ドル安への転換を意識する局面にあります。下のチャートをみると、今週の焦点は103.50レベルの攻防。この水準を挟んで200日線と半値戻しの水準が展開しています。21日線が低下基調へ転換するなか、ドルインデックスが103.50レベルをも下方ブレイクする場合は、米ドル高のトレンドが転換するシグナルがまた一つ点灯することに。

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