良好な米小売売上高を受けて急反発。米金利上昇と米株上昇のコンビネーション相場
〇昨晩、米PPI鈍化に対し、米小売売上高の予想比の堅調、NY連銀製造業指数の好調に為替市場乱高下
〇ドル円、米国時間に150.06の安値をつけた後151円台前半に急反発
〇ユーロドルは1.0886まで上昇後に1.0831まで反落
〇ドル円、再び一目均衡表基準線、転換線、21日移動平均線、ボリンジャーミッドバンドを上抜ける
〇強い買いシグナル継続、ここ数日の下げの半値戻しも達成、地合い極めて強い
〇引き続き、ドル高・円安トレンドの継続をメインシナリオとして予想
〇本日の予想レンジ:150.75ー152.2
海外時間のレビュー
15日(水)のドル円相場は下落後に急反発。(1)前日発表された米10月消費者物価指数の伸び率鈍化や、 (2)米10月生産者物価指数(結果+1.3%、予想+1.9%)および、米10月生産者物価コア指数(結果+2.4%、予想+2.7%)の市場予想を下回る結果、 (3)上記1、2を背景とした米長期金利の急低下(米国のインフレ鈍化期待→米FRBによる追加利上げ観測後退→利下げ開始時期の前倒し観測→米長期金利急低下)が重石となり、米国時間朝方にかけて、安値150.06まで下落しました。
しかし、売り一巡後に下げ渋ると、 (4)米10月小売売上高(結果▲0.1%、予想▲0.3%)および米10月小売売上高・除自動車(結果+0.1%、予想▲0.1%)の市場予想を上回る結果や、 (5)米11月ニューヨーク連銀製造業景況指数(結果+9.1、予想は▲3.0)の市場予想を上回る結果、 (6)上記4、5を背景とした米長期金利の急上昇(米10年債利回りは4.42%から4.56%へ急上昇)、 (7)米主要株価指数の底堅い動きが支援材料となり、米国時間午後にかけて、高値151.46まで急伸しました。引けにかけて小反落するも下値は堅く、11/16午前6時00分現在では、151.40前後で推移しております。
15日(水)のユーロドル相場は上昇後に反落。(1)中国の主要経済指標(中国10月鉱工業生産、中国10月小売売上高)の良好な結果や、(2)ユーロ圏9月貿易収支(92億ユーロ黒字、予想67億ユーロ黒字)の黒字幅の予想比拡大、(3)米10月生産者物価指数および、米10月生産者物価コア指数の市場予想を下回る結果、 (4)上記3を背景とした米長期金利の急低下が支援材料となり、米国時間朝方にかけて、高値1.0886まで上昇しました。しかし、買い一巡後に伸び悩むと、 (5)米10月小売売上高および米10月小売売上高・除自動車の市場予想を上回る結果や、 (6)米11月ニューヨーク連銀製造業景況指数の力強い結果、 (7)上記5、6を背景とした米長期金利の急上昇(米10年債利回りは4.42%から4.56%へ急上昇)が重石となり、日本時間0時頃に、安値1.0831まで反落しました。引けにかけて小反発するも戻りは鈍く、11/16午前6時00分現在では、1.0843前後で推移しております。
本日の見通し
ドル円は前日11/13に記録した年初来高値151.91(2022年10月21日以来、約1年1カ月ぶり高値圏)をトップに反落に転じると、米国のインフレ鈍化(米CPIおよび米PPIの市場予想を下回る結果)に反応する形で、昨日は一時150.06まで急落しましたが、米10月小売売上高および米11月ニューヨーク連銀製造業景況指数が市場予想を上回ると、一転して151.46まで急伸する荒々しい値動きとなりました。日足ローソク足が再び一目均衡表基準線、転換線、21日移動平均線、ボリンジャーミッドバンドを上抜けしたことや、強い買いシグナルを示唆する「一目均衡表三役好転」「強気のパーフェクトオーダー」「ダウ理論の上昇トレンド」が継続点灯していること、ここ数日間の下げ幅の半値戻し(151.91→150.06→151.46)を既に達成できていること(半値戻しは全値戻しの格言あり)などを踏まえると、テクニカル的に見て、地合いは「極めて強い」と判断できます。
また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)米FRBによる金融引き締め長期化観測(米長期金利が高止まりするとの思惑)や、(2)日銀による金融緩和の長期化観測(円金利が低位に留まるとの思惑)、(3)上記1、2を背景とした日米金融政策の方向性の違いとそれ伴う円キャリートレードの継続期待(日米金利差に着目したドル買い・円売り)、(4)株式市場の堅調推移(リスク選好の円売り継続→クロス円上昇→ドル円連れ高)など、ドル円相場の続伸を連想させる材料が揃っています。以上を踏まえ、当方では引き続き、ドル高・円安トレンドの継続をメインシナリオとして予想いたします(年初来高値151.91や、昨年高値151.95を早期に突破するシナリオを想定)。
尚、本日は米11月フィラデルフィア連銀景況指数や、米10月輸出入物価指数、米新規失業保険申請件数、米10月鉱工業生産、米10月設備稼働率、米11月NAHB住宅市場指数、米当局者発言(クリーブランド連銀メスター総裁、ニューヨーク連銀ウィリアムズ総裁、バーFRB副議長)など、重要イベント目白押しとなるため、米国時間帯のボラティリティ拡大に注意が必要でしょう(アップサイドリスクを特に警戒)。
本日の予想レンジ:150.75ー152.25
⚫外為市場では円安が進行中。クロス円ではユーロ円が164円台へ、ポンド円が188円台へ、豪ドル円が98円台へ上昇。今のドル円は円安にサポートされる状況に。
⚫ドル円の日足チャート。昨日取り上げた21日線と23.6%の水準で反発。上昇基調のトレンドチャネル(短期サポートライン)も維持。昨日は米ドル相場は主要通貨で売り買いが交錯。個人的に今は、円安の進行に注目しています

サマリー
・15日の市場では米金利が反発するも、米ドル相場は強弱まちまちの状況となった
・今日の変動要因は米新規失業保険申請件数となろう
・現在の外為市場では円安が進行している、ドル円は円安にサポートされる状況にある
⚫米金利が反発するも米ドル相場は強弱まちまちの展開に
米商務省が15日に発表した10月の小売売上高(速報値、季節調整済み)は、前月比で0.1%減となった。7カ月ぶりに減少したが、市場予想の0.3%減は上回った。
一方、コア売上高(除自動車、ガソリン、建築資材、外食)は、同比0.2%増で市場の予想と一致した。
10月の小売売上高は、将来の個人消費の不透明感を示唆する内容となった。しかし米債市場では、小売売上高が発表された後に反発の圧力が高まった。
10年債利回りは4.5%台へ反発。30年債利回りも4.7%台まで反発する局面が見られた。
米金利の反発は、日本円や欧州通貨など一部の主要通貨に対して米ドルの買い戻しを促した。しかし相場全体を見れば米ドル安優勢の状況が続いた。
10月の消費者物価指数(以下CPI)でインフレの鈍化傾向があらためて確認されたことで、短期金融市場では次回の連邦準備制度理事会(FOMC、12月12-13日)での利上げ見送りが織り込まれる状況にある。
そして早ければ来年の5月にも、連邦準備制度理事会(FRB)が利下げ政策へ転換する可能性も織り込む状況にある。
そして今後は米経済が減速してく可能性が高いことも考えるならば、米長期ゾーンの利回りは中長期的に緩やかな低下トレンドを形成することが予想される。
ゆえに現在の外為市場は、米ドル高トレンドの転換を意識する局面にあると考えられる。

⚫ドル円、今日の見通しとチャートポイント
円安にサポートされるドル円
ドル円(USD/JPY)は、昨日のIG為替レポートで取り上げた21日線とフィボナッチ・リトレースメント23.6%の水準で反発する展開となった。昨日の反発は、米ドル買いよりも円安進行の影響が大きい。
短期金融市場では、米連邦準備制度理事会(FRB)による利上げサイクルの終了を織り込んでいる。そしてこの状況が、米株高を促している。短期的に米株高のトレンドが続く場合は、他の主要な株価指数の上昇要因になり得る。
短期的に株高が続く可能性があることを考えるならば、外為市場ではリスク選好相場を意識した円安優勢の状況が続く状況を想定しておきたい。
ゆえに、米ドル安を受けてドル円が下落しても、その幅は限定的となることが予想される。
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