20231101 朝 切り抜き

ドル円、日銀金融政策決定会合の無難通過で年初来高値を大幅更新。本日は米FOMCに注目

〇ドル円、米国時間にかけ151.73まで上昇
〇予想範囲内の日銀会合、植田総裁のハト派姿勢堅持、10月介入実績無し、米指標の好調等が背景
〇ユーロドル、欧州指標好調、ECB関係者のハト派発言等に1.05台後半に急落
〇ドル円、テクニカルの地合い極めて強く、ファンダメンタルズもドル円の更なる上昇材料揃う
〇本日、ADP雇用統計、ISM製造業景況指数、FOMC、パウエルFRB議長会見等に注目
〇ドル円が昨日記録した年初来高値151.73や、昨年高値151.95を一気に突破する可能性も
〇本日の予想レンジ:150.75ー152.75

⚪昨日の外為市場は円安優勢の展開に。ドル円は高値151.75(IGレート)まで急伸。クロス円でも円安が進行し、ユーロ円はレジスタンスとして意識されていた160.00レベルを大陽線で上方ブレイク。ポンド円も184.00レベルを一気に上抜ける展開に。

海外時間のレビュー

31日(火)のドル円相場は急上昇。アジア時間朝方にかけて、安値149.03まで軟化するも、一巡後に下げ渋ると、(1)日銀金融政策決定会合の無難通過(日銀はYCCの上限である1%を超える取引を容認する柔軟化措置を決定→事前予想の範囲内→円売り再開)や、(2)展望リポートにおけるコアコア(除く生鮮食品・エネルギー)見通しの慎重な水準設定(2024年度、2025年度共に1.9%と、2.0%を下回る水準に設定)、(3)植田日銀総裁による「物価目標達成の十分な確度持って見通せる状況になお至ってない」「粘り強く金融緩和を続ける方針」とのハト派的な発言、(4)外国為替平衡操作の実施状況 (9/28ー10/27)における「介入実績ゼロ」の結果報告(市場では10/3に発生したドル円の急落劇が政府・日銀による介入に起因しているとの観測が根強かったものの、実際には政府・日銀は介入していなかったことが判明→介入警戒感の後退→円売り再開)、

(5)株式市場の堅調推移(リスク選好の円売り圧力)、(6)直近高値突破に伴う仕掛け的なドル買い・円売り、(7)米10月コンファレンス・ボード消費者信頼感指数(結果102.6、予想100.5)の市場予想を上回る結果が支援材料となり、米国時間午後にかけて、年初来高値151.73まで急伸しました。引けにかけて小反落するも下値は堅く、本稿執筆時点(日本時間11/1午前5時30分現在)では、151.63前後で推移しております。

31日(火)のユーロドル相場は上昇後に急反落。欧州時間朝方にかけて、高値1.0675まで上値を伸ばすも、一巡後に伸び悩むと、(1)ユーロ圏7ー9月期GDP速報値(結果+0.1%、予想+0.2%)の市場予想を下回る結果や、(2)ユーロ圏10月消費者物価指数速報値(結果+2.9%、予想+3.1%)の市場予想を下回る結果、(3)イタリア中銀ビスコ総裁による「ECBはこれまで急激な利上げを行っており今後数カ月は慎重な対応が必要」とのハト派的な発言、(4)ギリシャ中銀ストゥルナラス総裁による「ECBはターミナルレートに到達したと思われる」とのハト派的な発言、(5)フランス中銀ビルロワドガロ総裁による「フランスではインフレが明らかにピークを過ぎた」とのハト派的な発言、(6)米10月コンファレンス・ボード消費者信頼感指数の市場予想を上回る結果、(7)欧州債利回り低下に伴うユーロ売り圧力が重石となり、米国時間午後にかけて、安値1.0558まで急落しました。引けにかけて小反発するも戻りは鈍く、本稿執筆時点(日本時間11/1午前5時30分現在)では、1.0576前後で推移しております。

本日の見通し

ドル円は前日海外時間に記録した安値148.81をボトムに切り返すと、昨日は一時151.73(年初来高値)まで急伸しました(昨年高値151.95に迫る展開)。上位足から下位足に至る全てのローソク足に強い買いシグナル(一目均衡表三役好転、強気のパーフェクトオーダー、強気のバンドウォーク、ダウ理論の上昇トレンドなど)が点灯しており、テクニカル的に見て、地合いは極めて強いと判断できます。また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)米FRBによる金融引き締め長期化観測や、(2)日銀による金融緩和の長期化観測(植田日銀総裁は記者会見で金融緩和の継続姿勢を再強調)、(3)日米金融政策の方向性の違いとそれに伴う円キャリートレードの継続期待、(4)政府・日銀による為替介入のやりにくさ(外国為替平衡操作の実施状況によると、政府・日銀は9/28ー10/27の期間の介入実績はゼロ)など、ドル円相場の更なる上昇を連想させる材料が揃っています。

こうした中、本日は上記1を確認する目的で、米10月ADP雇用統計(21:15)や、米10月ISM製造業景況指数(23:00)、米9月JOLT雇用動態調査(23:00)、米FOMC(03:00)、パウエルFRB議長記者会見(03:30)に注目が集まります。米経済指標が市場予想を上回る場合や、パウエルFRB議長よりタカ派的な見解(※米FOMC自体は政策金利の据え置きが見込まれているため、市場参加者の関心は、パウエルFRB議長より「今後の金融政策に関するヒント」が得られるか否か。「長期金利の高止まりが実質的な金融引き締め効果をもたらしているため追加利上げの必要性が低下している」との見解が改めて示されれば、一時的にドル売りで反応する可能性があるものの、これは裏を返せば「長期金利が仮に低下すれば追加利上げの必要性が増すこと」を示唆しているため、結果としてFF金利の「より高く・より長く」が意識され、為替市場にはドル高圧力が加わる見込み)が示される場合には、ドル円が昨日記録した年初来高値151.73や、昨年高値151.95を一気に突破する可能性もあるため、当方では引き続き、ドル高・円安トレンドの継続をメインシナリオとして予想いたします。

⚪米国株式⚪

昨日の米国株は買戻しが続き、主要指数はそろって上昇引け。S&P500指数のセクター別パフォーマンスを確認すると、全てのセクターが上昇した。しかし、米長期金利は再び4.9%台へと上昇。FOMCと雇用関連の経済指標が米金利の上昇要因となる可能性を警戒しておきたい。

⚪米債市場⚪

日銀イベントを通過し、次の焦点はFOMC。ですが、個人的により重視しているのが雇用関連の経済指標。3Qの米雇用コスト指数は1.1%と前期の1.0%から上昇。米債市場では

10年債利回りが4.9%台へ再上昇し、目先の上限として意識されている「5%」を再び視野に入れる状況に。今週は10月雇用統計など雇用関連指標が目白押し。FOMCの政策はデータ次第。ゆえに雇用関連指標は、FOMC以上に重要な材料になり得る。

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