来週の為替相場展望(9/11-9/15) 『日米金融政策格差を背景にドル高・円安の流れが続く見通し』

サマリー
〇今週のドル円、週後半にかけて年初来高値147.88まで急伸、週末も高値圏で越週
〇米指標の好調と株価の堅調、FRB関係者のタカ派発言等がサポート
〇ドル円、主要テクニカルポイントの上で推移、強い買いシグナルも成立、地合い極めて強い
〇ファンダメンタルズも日米金融政策の方向性の違い、株価の堅調推移がサポート
〇ドル円相場の上昇をメインシナリオとして予想
〇来週の予想レンジ(USDJPY):146.50ー149.50、(EURUSD):1.0500-1.0800

○各ニュースメディアでのドル買われ過ぎ指摘が目立つ。
NY市場サマリー(8 日)ドル/円上昇、10 年債利回り低下 S&P小反発 ‐ロイター
【米国市況】ドル指数が8週連続高、2005 年以来最長-147 円台後半 ‐Bloomberg

○ドルインデックスが強いというが、構成比率から見れば EURUSD の真逆の相関の値動きをする代物で、EURUSD が弱いのであって、円こそ申し訳程度に入ってはいるが、豪ドルや人民元がデータとして入っていない指数のため、あまりアテにならない代物
しかし、円が弱い。確かに大手ニュースメディアの指摘通りドルは強いのだが、ユーロもポンドもクロス円では上昇トレンドを未だ明確に崩しておらず、最弱豪ドルもようやく夏場に上昇トレンドを脱したがまだ高値圏だ。金融政策の乖離と貿易収支の結果でごもっともなのだが、本当にこの国は大丈夫なのか?と心配になる・・・

○【マイナス金利解除「物価上昇に確信持てれば選択肢」…植田日銀総裁インタビュー ‐読売新聞オンライン】そんな中トレーダーの間で俄かに注目を集めている記事、結構な内容となっている。新手の介入手法か?ここに来て 6 日に行った植田日銀総裁への単独インタビューを引け間際の時間帯に読売新聞がアップしてきた。
因みに植田日銀総裁が日銀総裁就任後、報道機関単独でインタビューを受けるのは初めてとの事
日銀が YCC を撤廃、マイナス金利を解除したとて過度な円安は是正されるだろうが、円高になるかは未だ不明

○シカゴ投機筋は引続き欧州通貨を買って、円と豪ドルを滅多売り、株価指数はショート継続。
○リテールはここに来て欧州通貨を買ってきた。
まあ、ドル高で間違え無さそうだ。
さて、来週は 8 月の米消費者物価指数(CPI)が発表される。

○CPI 下落トレンドからの反発。
これが継続する様だと今月 FOMC での金利据え置きすら危うくなる
因みにコア CPIは6月4.8%で 7月4.7%だったので下落傾向なのだが、もしこれも
上向くとなると如何か?

米国とユーロ圏では消費者物価指数の算出方法が若干異なるものの、ユーロ圏は横ばい、ユーロをけん引するドイツでは低下傾向を維持している。
原油価格が 7 月に反発したため、その影響が物価に反映されるのには少々タイムラグが有って然るべきだが、エネルギーと食品を除くコアはかなり低下(7 月 6.6%、8 月 6.2%と 0.4%の低下)している。これで、米国の CPI が強い様だと金利据え置き織り込み度は変化するのではないか?コアは注目材料となる8 月の米 CPI 予想は 3.6%で 7 月より+0.3%、コア CPI 予想は 4.3%で 7 月より-0.4%仮に予想を割ったからと言って油断できないのは、米国の CPI が反発傾向維持となった場合、発表直後こそ下げる可能性はあるが、FX は通貨ペアのため、時間の経過と共に欧米の物価格差を埋めに掛かる可能性は否定できない、反発を維持するには予想と 7 月の前年同月比との間に 0.3%あるという事は頭に入れておきたい。指標の数字、それだけを見ていると痛い目に合う可能性があるので注意が必要だ

<ドル円相場>9/4-9/8
先週のドル円相場は、週初146.20で寄り付いた後、早々に週間安値146.01まで下落。しかし、売り一巡後に下げ渋ると、
(1)前週末金曜日以降のドル買い戻しの流れの継続(米雇用統計後の下値トライ失敗→米ISM製造業景況指数および米8月ISM支払価格の市場予想を上回る結果→短期筋のショートカバー発動→ドル円急反発)、
(2)株式市場の堅調推移(中国当局による住宅需要喚起策を好感→リスク選好の円売り圧力)、(3)米レイバーデー明けの海外勢によるドル買い参入、
(4)米7月製造業受注指数(結果▲2.1%、予想▲2.5%)の市場予想を上回る結果、
(5)クリーブランド連銀メスター総裁による「政策金利をやや引き上げる必要があるかもしれない」とのタカ派的な発言、
(6)米8月ISM非製造業景況指数(結果54.5、予想52.4)の市場予想を上回る結果、
(7)米長期金利の急上昇(米2年債利回りが8/29以来の高水準となる5.03%へ急上昇、米10年債利回りは8/23以来の高水準となる4.30%へ急上昇)が支援材料となり、週後半にかけて、年初来高値147.88(昨年11/4以来の高値圏)まで急伸。

その後は、
(8)日本政府・当局による介入警戒感の高まり(神田財務官による「ファンダメンタルズでは説明できない動きがみられる」との円安牽制発言や、高田日銀委員による「日銀は為替含め金融市場のボラティリティにそれなりに対応」との円安牽制発言、鈴木財務相による「為替市場の動向を高い緊張感を持って注視」「過度な変動にはあらゆる選択肢を排除せず」との円安牽制発言)や、
(9)米金利低下に伴うドル売り圧力、
(10)短期筋のポジション手仕舞い(円ショートポジションの利食い)を背景に、一時146.59まで下押しする場面も見られましたが、下がったところでの押し目買い意欲は根強く、すぐに反発に転じると、
(11)米当局者による相次ぐタカ派発言(ニューヨーク連銀ウィリアムズ総裁による「インフレは依然として高すぎる」とのタカ派的な発言や、アトランタ連銀ボスティック総裁による「インフレ率を2%の目標に下げるためにまだやるべき仕事がある」とのタカ派的な発言、ダラス連銀ローガン総裁による「9月に1回見送り後に利上げ再開必要も」とのタカ派的な発言)や、
(12)日米金融政策格差に着目した円キャリートレード再開の思惑が支援材料となり、では147.82前後まで持ち直す力強い動きとなっております。

<ユーロドル相場>
先週のユーロドル相場は、週初1.0777で寄り付いた後、
(1)欧州株の堅調推移(中国当局による住宅需要喚起策を好感)、
(2)クロアチア中銀ブイチッチ総裁による「底堅い労働市場は引き続き迅速な賃金上昇につながっており物価の上昇リスクを生み出している」とのタカ派的な発言、
(3)ベルギー中銀ウンシュ総裁による「ECBが利上げサイクルを停止する前にさらなる利上げが必要になる可能性がある」とのタカ派的な発言

支援材料となり、週明け早々に、週間高値1.0810まで上昇しました。しかし、買い一巡後に伸び悩むと、

(4)中国8月財新非製造業PMI(結果51.8、予想53.5)の市場予想を下回る結果や、
(5)イタリア8月非製造業PMI(結果49.8、予想50.4)の市場予想を下回る結果、
(6)フランス8月非製造業PMI(結果46.0、予想46.7)の市場予想を下回る結果、
(7)ユーロ圏8月総合PMI(結果46.7、予想47.0)および、ユーロ圏8月非製造業PMI(結果47.9、予想48.3)の市場予想を下回る結果、
(8)米8月ISM非製造業景況指数の市場予想を上回る結果、
(9)ドイツ7月鉱工業生産(結果▲0.8%、予想▲0.4%、前月比)の市場予想を下回る結果、
(10)ユーロ圏4ー6月期GDP確報値(結果+0.5%、予想+0.6%、前年比)の市場予想を下回る結果が重石となり、

週後半にかけて、週間安値1.0686(6/8以来、約3カ月ぶり安値圏)まで下落しました。引けにかけて小反発するも戻りは鈍く、現時点では、1.0697前後で推移しております。

尚、上記以外にも、
・ラガルドECB総裁による「ユーロ圏は非常にインフレが高過ぎる状況」とのタカ派的な発言や、
・ドイツ連銀ナーゲル総裁による「インフレはなお高すぎる」「インフレ率は目標にはまだ達していない」「ピークレートに達した後のすぐの利下げに賭けるのは間違い」とのタカ派的な発言、
・オランダ中銀クノット総裁による「市場は9月利上げ確率を過小評価している可能性」とのタカ派的な発言、
・スロバキア中銀カジミール総裁による「ECBはあと1回利上げが必要で来週が望ましい」とのタカ派的な発言が相次ぎましたが、
→ユーロ買いでの反応は限定的となりました。

来週の見通し(9/11-9/15
<ドル円相場>=テクニカル的に見て、地合いは極めて強い=
ドル円は9/1に記録した安値144.44をボトムに切り返すと、今週後半にかけて、年初来高値147.88まで急伸。日足ローソク足が全ての主要テクニカルポイント(21日線、50日線、90日線、200日線、ボリンジャーミッドバンド、一目均衡表転換線、基準線、雲上限)の上側で推移していることや、強い買いシグナルを示唆する「一目均衡表三役好転」「強気のパーフェクトオーダー」「強気のバンドウォーク」「ダウ理論の上昇トレンド」が成立していること等を踏まえると、テクニカル的に見て、地合いは極めて強いと判断できます。

また、ファンダメンタルズ的に見ても
(1)米FRBによる金融引き締め長期化観測や、
(2)日銀による金融緩和の長期化観測、
(3)上記1、2を背景とした日米金融政策の方向性の違い(日米金利差拡大を見越した円キャリートレード継続期待)、
(4)株式市場の堅調推移(リスク選好の円売り圧力)など、ドル円相場の続伸を連想させる材料が揃っています。
政府・日銀による介入観測が都度上値を抑制する可能性はあるものの、昨年10/21に記録した高値151.95を抜けてくるまでは口先介入に留まる(実弾介入には踏み切りづらい)と見られることから、当方では引き続き、ドル円相場の上昇をメインシナリオとして予想いたします(事実今週も神田財務官や鈴木財務相、高田日銀委員より円安牽制が見られましたが、ドル売り・円買いでの反応は限定的)。

尚、来週はブラックアウト期間に突入済みのため、米当局者発言は予定されていないものの、9/13に予定されている米8月消費者物価指数を皮切りに、9/14の米8月生産者物価指数、米8月小売売上高、9/15の米9月ニューヨーク連銀製造業景況指数、米9月ミシガン大消費者信頼感指数など、重要イベント目白押しとなっています。
米経済指標が市場予想を上回る場合には、年内利上げ観測の高まりや、来年の利下げ時期後ろ倒し観測の高まりを背景に、ドル高・円安の流れに拍車がかかる恐れもあるため、来週は週央から週後半にかけてのドル円急伸リスクに特に警戒が必要でしょう(状況次第では昨年10/31に記録した高値148.86を突破する可能性あり。同水準を突破できれば心理的節目150.00や、昨年の年間高値151.95が射程圏内に)。

来週の予想レンジ(USDJPY):146.50ー149.50

<ユーロドル相場>=テクニカル的に見て、地合いの弱さを印象付けるチャート形状=
ユーロドル相場は7/18に記録した約1年5カ月ぶり高値1.1277(昨年2/24以来の高値圏)をトップに反落に転じると、今週後半にかけて、約3カ月ぶり安値となる1.0686まで急落。

この間、日足ローソク足が主要テクニカルポイント(21日線、50日線、90日線、200日線、ボリンジャーミッドバンド、一目均衡表転換線、基準線、雲上下限)を下抜けした他、強い売りシグナルを示唆する「一目均衡表三役逆転」「弱気のバンドウォーク」「ダウ理論の短期下落トレンド」も成立するなど、テクニカル的に見て、地合いの弱さを印象付けるチャート形状となっております。

また、ファンダメンタルズ的に見ても
(1)欧州経済の先行き不透明感(直近で発表された欧州経済指標は軒並み悪化)や、
(2)上記1を背景としたECBによる金融引き締め休止観測、
(3)米FRBよる金融引き締め長期化観測、
(4)上記2、3を背景とした欧米金融政策の方向性の違い(欧米金利差拡大に伴うユーロ売り・ドル買い圧力)など、ユーロドル相場の下落を連想させる材料が揃っています。

こうした中、来週は上記1を確認する目的で9/11に予定されている欧州委員会夏季経済見通しや、9/12に予定されているドイツ9月ZEW景況感指数、上記2を確認する目的で9/14に開催されるECB理事会に注目が集まります。

特に後者(ECB理事会)への注目度が高く、市場では依然「据え置き派」と「25bp利上げ派」で割れていますが、当方は欧州経済指標の直近の下振れを考慮し、「据え置き」を予想しています。

以上を踏まえ、引き続き、ユーロドル相場の下落(ECBによる据え置き決定→ECBによる金融引き締め休止観測→ユーロ急落)をメインシナリオとして予想(声明文やラガルドECB総裁よりバランスを取るために意図的にタカ派的なトーンが示されたとしても、ユーロ買いでの反応は限定的となる可能性大。

状況次第では、5/31安値1.0634や、3/15安値1.0516、心理的節目1.0500、1/6安値1.0483を下抜け、年初来安値を更新する恐れあり)

来週の予想レンジ(EURUSD):1.0500-1.0800

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