今週のドル円

今週のドル円、サポート帯とトレンド転換条件

ドル円の現状分析についてですが、
円安方向へ伸びたチャート形状になっています。

先週末時点では、短期的な観点でも、
トレンド転換(円安から円高へ)の兆候はこれといって見当たりません。

まずサポート帯を確認しておきたい、
円安ペースが速いこともあって、サポート帯がまだ近い所まで上がってきておらず
現時点で、円高方向のサポート帯は147円台中盤。

もし今週急に円高へ動き出した場合、
その148円を割れて147円台に入ってきたときに、ようやく“サポート帯の攻防”、
つまり短期トレンドが変わるかどうかが注目されることになります。

◼️円安予想

今週の値動きによって上記のサポート帯が上がってくる可能性はありますが、
先週末時点では147円台中盤に位置していますので、
それより上の水準をキープしている限りは、
依然として先週から指摘しております、
次の円安予想ターゲット150円に向かう潜在力があるとの見方になります。

なお、この「円安ターゲット150円」についてですが、
決して、キリのよい数字だからということではありません。

秘伝チャート分析
ドル円の秘伝チャート基準枠において、9月上旬~中旬までの保ち合いによる
相場エネルギーを計測しますと、円安ターゲットは厳密には149.9~150.0円が算出されます

去年の最高値151円に迫る?

さらに言えば、ドル円の秘伝チャート2倍枠において
8月後半~9月初旬までに形成された保ち合いの相場エネルギーによる
上昇ターゲットは151.6円辺りが算出されると思います。

その8月の保ち合いを上抜けてきた後に、
9月もちょっと形状がいびつではありますが、保ち合いと認識することもでき
これを先週上抜けてきたと仮定しますと、
このエネルギーが完全放出される地点が151.2円

さらに言えば、基準枠ですと先週後半に高値149.6円
(最高値149.7円ですが日足終値ベースでは高値149.6円)から
軽く折り返したところで、もしこの小反落が終了して
今週また円安の勢いがついて先週高値を一気に上回ってきた場合、
いわゆる背伸びの形状が出現しますが、この到達地点が151.3円あたり。

以上より、151円台に複数の計測手法によるターゲットが重複することになります。
これを素直に解釈するならば、150円を超えて151円へ伸びたあたりで
チャート分析における短期的な円安エネルギーはほぼ放出されるとの見方もできるかなと思います。

◼️ドル円見通し 9月29日夕刻の反落を解消、9月11日以降の上昇トレンドを維持

〇先週のドル円、年初来高値149.70をつけた後、148.52まで反落するも149.48まで戻して越週
〇米8月コアデフレーターは前月比0.1%上昇、前月・市場予想を下回り20年11月来の低水準
〇米10年債一時4.66%まで上昇し4.58%で終了、週間では0.14%、月間では0.47%の上昇
〇今週は米9月雇用統計が最重要の焦点、他に重要指標の発表も相次ぐため、波乱含み
〇149円以上での推移するうちは9/28日高値149.70超えから150円試し
〇148.80割れからは9/29安値148.52試し、割り込む場合は147円台を試す下落期入りか

【概況】

ドル円は9月28日未明高値で149.70円を付けて年初来高値を更新、その後はジリ安の推移に入り、29日夕刻にかけては米長期債利回り低下を見て149円割れから売りの連鎖反応により148.52円まで反落したが、突っ込んだところは買い拾われて149円台を回復し、米長期債利回りの再上昇を見て30日未明には149.48円まで戻り高値を切り上げて29日夕刻への下落幅をほぼ解消した。

9月11日に植田日銀総裁インタビュー記事におけるマイナス金利解除への言及をきっかけとして9月9日早朝高値147.86円から11日夕安値145.89円まで2円近い下落となったところを起点として上昇再開に入り、9月21日未明の米FOMCと22日の日銀金融政策決定会合を通過しながらの乱高下から年初来高値更新に入り、9月28日未明には昨年10月21日高値151.94円以来の高値水準に達した。9月29日夕刻への反落においても、9月11日安値と9月21日深夜安値を結ぶ上昇トレンドの範囲にとどまっており、急落後の反騰としては9月21日深夜安値から切り返して一段高へ進んだ時に近い印象だ。
今週は10月6日の米9月雇用統計が最重要の焦点となるが、それに先立って重要指標の発表も相次ぐため、波乱含みで推移しながら150円台を目指して行けるのか、いったん仕切り直しの調整安局面に入るのか試されると思われる。

【9月30日の日銀総裁発言、出口への言及】

日銀の植田総裁は9月30日の福岡市における講演で、大規模金融緩和の出口局面での日銀の財務悪化に対する懸念について、「中央銀行は自ら紙幣を発行できる」「「一時的に赤字や債務超過になっても政策運営能力は損なわれない」「利上げしている海外の中銀では赤字や債務超過の事例が見られるが通貨の信認は維持されている」とし、出口へ向けての懸念を否定する発言を行った。

積極的に出口へ向かっているとの印象を与えるものではないが、日銀は9月22日の金融政策決定会合で金融緩和政策の維持を決定して必要なら追加緩和を行うとの従来姿勢を継続したが、今年は2度の長期金利変動許容上限の引き上げを行い、植田総裁インタビューでマイナス金利解除への言及があるなど、出口論へ向けた動きもにじませている。
ただし、9月11日に市場がマイナス金利解除への言及に過剰反応した際には市場が誤解しているとの認識をリークして市場を落ち着かせるなど、円安をけん制しつつも出口論への過剰反応を抑える姿勢も見せている。

【米PCEデフレーターは鈍化】

8月の米PCE(個人消費支出)は前月比0.4%増で7月の0.9%増から低下して市場予想の0.5%増を下回った。米FRBがインフレ指標として重視しているPCEデフレーターは全体の前年比が3.5%で7月の3.4%から伸びて2か月連続の上昇だったが市場予想と一致し、コアデフレーターは前月比が0.1%上昇で7月の0.2%および市場予想の0.2%を下回って2020年11月以来の低水準となり、前年比は3.9%で予想と一致して7月の4.3%から鈍化した。
米MNIインディケーターズによる9月のシカゴ購買部景況指数は44.1となり、8月の48.7から悪化して市場予想の47.6を下回った。
米ミシガン大学による9月消費者信頼感指数確報値は68.1となり、速報の67.7から上方修正されて8月確報の69.5から悪化した。
最近注目されている1年先のインフレ期待は8月の3.5%から3.2%へ低下して2021年序盤以来の水準となり、5年先のインフレ期待は8月の3.0%から2.8%へ低下して今年最低となった。

コアPCEデフレーターの前月比と前年比が予想を下回って鈍化したことと、ミシガン大の期待インフレ率が低下したことは米FRBへの追加利上げ圧力を緩めるものと受け止められたが、まだインフレ率そのものの高止まり感は残っている。
ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は29日の講演テキストにおいて、「FF金利の誘導目標レンジ(政策金利)はピークかそれに近い水準にある」とし、「しばらくの間は景気抑制的な金融政策スタンスを維持する必要があるとみている」と述べた。追加利上げをしなくてもピークに近い水準との見方であり、利上げ状態は暫く続くとしても過度の利上げ継続へ傾斜することを否定する姿勢と思われる。同総裁はインフレ率について2024年に2.5%、2025年に2.0%に近付くと予想している。

【米10年債利回りは上昇再開感、ダウは気迷いで反落】

9月29日の米長期債利回りは総じて低下したが、前日のピークから反落してから再上昇気配を示した。
長期金利指標の10年債利回りは前日比変わらずに4.58%で終了した。9月28日に一時4.688%をつけて2007年9月以来の高水準に達してから反落、29日は一時4.51%まで低下したが、終盤へ上昇しており上昇基調はなお健在と思われる。週間では9月22日終値4.44%から0.14%の上昇、月間では8月31日の4.11%から0.47%の上昇となった。

30年債利回りは0.01%低下の4.70%で終了したが、4.65%まで低下してから反騰している。9月28日には4.81%をつけて2010年4月以来13年半ぶりの高水準とした。
2年債利回りは0.01%低下の5.05%で終了したが、一時5.01%まで低下してから反発した。9月21日に付けたピークの5.20%からは低下傾向にある。
米国株式市場はマチマチ。NYダウは前日比158.84ドル安、ナスダック総合指数は18.04ポイント高だった。米連邦政府予算案を巡る混乱による政府機関一時閉鎖への懸念や全米自動車労組のスト長期化、中国景気への懸念、利上げの長期化問題等が重石となっている。

ドル円は9月11日や9月29日に小波乱を入れつつ、米FOMCと日銀会合を通過して7月14日安値を起点とした上昇基調を継続している。150円手前では市場介入への警戒感もあり慎重な動きだが、日米長期金利差の拡大とドル全面高による円安ならファンダメンタルズに即した円安であり、一日の変動幅が過剰とならなければ政府・日銀の市場介入を仕掛けるのを躊躇するのではないかと思われる。また昨年も一度目の大規模介入では円安を止められなかったことを踏まえ、昨年の介入規模を超える強い意志による介入でなければ一時的に急落したところはバーゲンハントの場となりかねない。
今週は週末の米雇用統計が焦点となるため、それまではやや慎重な動きで推移すると思われるが、短期的には9月29日夕安値を押し目底とした上昇により9月28日未明高値149.70円を超えて150円前後を試し、その後に149円前後へ下げる場面も買い拾われながら雇用統計へ向かうのではないかと考える。

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